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グノーシス研究拾遺
—今まで漏れ落ちていたものを拾い集めて補うこと。 これほど似つかわしい言葉があろうか。 グノーシス主義の探究は新約聖書研究にとって不可欠・不可分の関係にあるとの信念から日本のグノーシス研究を長く牽引してきた著者が、ナグ・ハマディ文書の全体像からH・ヨナスの労作『グノーシスと古代末期の精神』までを改めてつぶさに逍遙し、グノーシス研究の道行きに散りばめられていた智の欠片を拾い集めた待望の書。 重要なのは、その神々の頂点にいる至高神が、たとえどのような名前で表記されようと、実は人間のもともとの本来の在り方を指す別名であることを見抜くことである。グノーシス神話は絶対的な人間至上主義にほかならない。人間こそが至高神であれば、それを超えるものは何もない。グノーシス神話の謎を解く鍵はただ一つ、どうして人間は至高の神の一部でありながら、間違った居場所へやってきてしまったのか? そもそも間違った場所とは何のことなのか? この一点から読むことである。 (本文より) |